箱根仙石原の別荘地に建つ純和風の建物の改修計画である。

南側に大涌谷を臨む素敵なロケーションでありつつ、年中多湿で冬は氷点下が当たり前という、人が快適に暮らすにはなかなか厳しい環境の別荘地であった。

オーナーが変わるたびに部分的に改修されていた履歴があり、元々の数寄屋風の造りであった建物全体の統一感が薄れてしまっている印象を受けた。そこで今回の改修では、建物が本来もっていた雰囲気を取り戻しつつ、現代的な和の感覚を取り込みながらアップデートするという方針で設計を進めた。

断熱や空調による建物性能の改善をベースのしつつ、大きな間取りの変更は行わず、あくまで全体の意匠性の統一と仕上げの整理を心がけている。

既存のしつらえはできるだけそのまま残し、あえて垂れ壁や袖壁を作ることで空間に奥行を感じさせたり、極端な仕上げの変更はせずに照明やインテリアで空間の見せ方を変えるといったさりげない操作がところどころに散りばめられている。